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バルセロナ 医療通訳:下山 由紀子
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ワクチンについて スペインで実施されている現行ワクチン接種カレンダー
ワクチンの代表的なものとして「生ワクチン」と「不活化ワクチン」及び「トキソイド」があります。 生ワクチンは、病原体は生きているが、病原体のウイル スや細菌が持っている病原性を弱めたものです。これを予防接種すると、その病気に自然にかかった状態とほぼ同じ免疫力がつきます。病原性を弱くしたウイル スや細菌が身体の中で徐々に増えるので、接種後1~3週間に自然に罹患したのと同じような軽い症状が出ることがあります。代表的なワクチンとしては、 MR(麻しん風しん混合)、麻しん(はしか)、風しん、おたふくかぜ、水痘(みずほうそう)、BCG(結核)などのワクチンがあります。
不活化ワクチンは、病原性を無くした細菌やウイルスの一部を使います。生ワクチンに比べて免疫力が弱いので、何回かに分けて接種します。代表的なワクチ ンとしては、DPT-IPV四種混合(D:ジフテリア・P:百日せき・T:破傷風・IPV:不活化ポリオ)、DPT三種混合(D:ジフテリア・P:百日せ き・T:破傷風)、DT二種混合(D:ジフテリア・T:破傷風)、日本脳炎、インフルエンザ、A型肝炎、B型肝炎、肺炎球菌、不活化ポリオなどのワクチン があります。
トキソイドは、細菌の産生する毒素(トキシン)を取り出し、免疫を作る能力は持っているが毒性は無いようにしたものです。不活化ワクチンとして分類されることもあります。ジフテリア、破傷風のワクチンは、トキソイドです。 (一般社団法人 日本ワクチン産業協会 から引用)
HIB ワクチン
最近、日本でもHibワクチンの予防接種がはじめられたようですが、この予防接種を受けた直後に亡 くなられたお子さんがおられるということで、こちらでのHibワクチン接種を不安に感じられる声が聞かれます。
そこでこちらのHibワクチン(こちらでは DTPと Hib、ポリオ、B型肝炎が1本になっているインファンリックスが普通なので、Hibのみの独立ワクチンはありません)の製造業者を問い合わせたところ、 日本のHibと同じラボラトリーが製造していました。ただし、こちらではHibワクチンを打って長年になりますが、そのような副作用があった記録がないと いうことで、次のような示唆を小児科医より受けました。
「以前、ワクチンはCelular(細胞ワクチン)だったのですが、2004年から Acelular(無細胞)ワクチンに変わりました。Acelularの方がCelularより弱いので回数が増えていますが、Acelularの方が副 作用が少ないのです。
なお、Hibワクチンはかなり以前からDTP(日本の三種混合ワクチン)に混ぜられており、ポリオも筋肉注射になってから一緒になっ て5種混合ワクチンでしたが、今はこれにB型肝炎も含まれた6種混合になっています。このワクチン接種で命にかかわる症状が出たという報告は今のところ聞 いていません。」
Hospital de Nens (小児専門総合病院) 小児科医、Dra. Lloberas
A型、B型 肝炎ワクチン
カタルーニャ州では、かなり以前からB型肝炎ワクチンが義務化されていますが、数年前よりA型肝炎ワクチンも接種されています。
現在、B型肝炎ワクチンは生後2か月、4か月、11か月で接種される DPT、Hib、Polio との混合ワクチンになっています。つまり、6種混合ワクチンです。
この混合ワクチンが使われるようになってかなりの年数が経っているので、私立病院の小児科では B型ワクチンのみの在庫がありません。しかしながら日本ではB型肝炎ワクチンは1本の独立したワクチンで、6か月かけて3回接種します。ただ、当地への移住までに3回接種する時間的な余裕が無く、ご到着後 「B型ワクチンだけ不足していますので、これだけ追加で打ってください」 と申告されるケースがありますが、残念ながらこのご要望には前述の事情により、私立病院では対応できません。
こうした状況への対処法はふたつあります。
1) B型肝炎ワクチンを保管している公立病院の小児科にかかって打ってもらう。(公立病院にかかるには、企業様や市役所などを介した手続きがいろいろありますので、まずこの手続きを完了する必要があります(ご到着後6か月以上の時間がかかる可能性があります)。
2) 日本では生後2か月、3か月、7か月後にB型肝炎を接種するように予定されていますが、例えば生後半年でこちらに移住される際、移住前に生後6か月までに必要な予防接種を受けるものの、当地でB型肝炎と混合になっている DPT、Hib、Polio の3回目を日本で接種せず、当地での 11か月健診で6種混合ワクチンを接種してもらうように予定を組む。
なお、DTP や Polio、水疱瘡ワクチンなどで1回目を日本で接種し、2回目以降を海外で受けることによって問題が生じた例は発生していませんので、この点についてはご安心ください。
肺炎球菌ワクチン
(プレベナー)
日本でも最近接種が始まったプレベナーは肺炎球菌といい、幼少時は髄膜炎を引き起こす球菌です。このワクチンは、去年までは肺炎球菌7種に対するワクチン でしたが、2011年からは肺炎球菌13種に対するワクチンに更新されています。
母子手帳のPrevenar接種欄にあるLot No.のところにPrevenar 7という銘柄が書かれてある方は、ご希望によりPrevenar 13の接種を受けることができますので、ご担当の小児科医にお問い合わせください。
日本では実施されていない予防注射(MCC:C型メニンゴ球菌、A型肝炎)などにつきましては、Prevenar以外はカタ ルーニャ州が義務付けているものですから小児科医は接種を勧めます。
義務ではあっても強制ではないので拒否することはできますが、欧米の大学を含む現地校 に入学する可能性のあるお子さんの場合は、入学手続き時にこれらの予防接種を必要としますので、ご一考ください。
メニンゴ球菌ワクチン
=髄膜炎=
メニンゴ球菌による髄膜炎は欧州各地では頻繁に発生していた病気で、A型、B型、C型、W型、Y型、の5種類が存在します。これらの型のうち、症例の8割を占めるのが B型 で、感染すると死亡率が10%にも上がる危険な病気ですが、最初の症状が風邪に似た症状であること、2歳未満に好発すること、重症化して脳に影響が出て赤ちゃん返りをきたしても、幼児の場合は発見が遅れがちになること、といった事情から発見が遅れることが多く、1996年の大流行ではかなりの子供たちが命を落としました。この時からワクチンを求める声が高まり、まずC型メニンゴ球菌のワクチンができて義務化されました。
その後C型以外のワクチンも接種可能になりましたが、B型だけはどのワクチンとも合併することができないため、現在、カタルーニャ州でのメニンゴ球菌接種は次のようになっています。
1) C型(義務)新生児から2歳までの間に4回接種
2) B型(有志※)1回分が120€程度。2回接種。
※2022年1月1日以降に生まれた子供は義務。2回接種
3) ACWY型(有志)1回でこれらすべての型の保護が可能。
カタルーニャ州にご到着になった時にお子様が乳児である場合、小児科医はなるべく早くに C型メニンゴ球菌ワクチンを接種することを推奨してきます。このワクチンは義務化される国が増えつつあり、特に北米の大学に入学する方は入学手続きで提出する予防接種実績記録にこのワクチンが含まれていることが条件になるケースが多いので、前向きにご検討になることをお勧めします。
幼稚園以上の年齢のお子様をお持ちの方は、B型を2回、ACWY型を1回接種すればメニンゴ球菌からかなり保護された状態となりますが、2021年時点ではまだこれらのワクチンは実費負担となっています。
メニンゴ球菌感染は、2歳までの乳幼児のほかに、大学生以上の年齢にも症例が出ており、首の後ろ側が硬直してうなずけない、手足が曲げられない、紅斑が現れる、などといった症状があります。過去にはバルセロナだけでも日本人の成人でも複数の方がかかり、入院して治療を受けた経緯がありますので、慎重にご検討ください。
更なる情報をご希望の方は、こちらをご参照ください。
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